長い年月のご使用や保存状態によって緞通に生じる変化や、しみ抜きやお手入れを行うことによって予測できる事例などをご紹介いたします。
また、これらの事例の中には予測が困難で完全に防ぎ切ることはできない場合もあり、どのような作業を施すのか前もってご理解いただいた上で、業務を承っております。
緞通をご愛用されることは、その長い年月による移ろいを「趣あるアンティーク」と捉え楽しんでいただければと考えております。
日焼け/退色について
ご使用または保存されている状態に限らず、日光や蛍光灯から出る紫外線の為、染色に影響があり、変色や退色しています。(例えば:畳が日焼けするのと同様です)
しみによる変色について
しみが付いて1ヶ月以上の時間が過ぎるとしみの成分が酸化し変色いたします。お手入れによって修復できるものもあります。(例えば:ブラウスの衿が黄ばむのと同様です)
カビについて
高湿度の中でご使用又は保存されていた場合、カビが発生していることがあります。この場合、修復できないことがあります。(例えば:衣服の黒カビと同様です)
劣化について
長年のご使用だけでなく、大切に保存されていても生地が経時(年)劣化いたします。使用された染料などにより、それを元に戻すことはできません。(例えば:人が年を重ねるのと同様です)
摩耗/擦り切れについて
長年のご使用により摩擦や強い押し付け、お手入れ等で毛羽先が摩耗し擦り切れることがあります。丁寧に作業いたしますが、どうしてもさらに摩耗してしまいます。(例えば:靴下の擦り切れと同様です)
洗浄による変色、織りムラ、傷について
お手入れすることによって、今まで目立たなかった変色や隠れていた汚れや織りムラが現れてくることがあります。また目立たなかった古傷がお手入れすることで、稀に傷口が拡がってしまうこともあります。
洗浄時のしみ等による移染(色泣き)に付いて
100年余り前のドイツの科学染料が使用された緞通は色止め処理が施されていないことから、手入れの際には水などで染料が生地の横方向に滲み出す移染(色泣き)を防ぐために、緞通の厚さ(毛足)の中に収めて解決しています。
乾燥による縮みについて
縮まないように作業を行いますが、全体サイズとして2%未満の縮みが生じます。
お手入れによる風合いの変化について
緞通の制作にある最終工程「敷き伸ばし」を行うことで毛並みが滑らかになり、製造された当時のパリっとした風合いが蘇ります。